「なにせ、隣りの方は私の彼氏ですから」
「えっ?」
俺は完全に呆気にとられていた。
そんな俺に、冷たく鋭い殺意の目で男子たちが俺を睨んでいた。
「あ、あはは、、、」
それからというもの、男子達からはなぜお前が神久夜さんと!やどうやって付き合った!とか、色々と質問攻めばかりされた。
その元凶である神久夜はというと、男子達の後ろでドヤ顔をしているのであった。
その日はなんとか学校が終わり、明日どうやって仕返ししようと考えながら下校した。
そして、いつもと変わらず家にたどり着き、玄関を開けた。
「ただいまー」
癖でただいまと言ってしまったが、俺は親とは離れていて、一人暮らしだ。だから、こんな事を言ったって、誰も返事なんか言ってくれやしない。
と、思っていた。
「おかえり〜」
おや?何故か返事がかえってきた。
だが、俺も馬鹿じゃない。これは多分親だ。
親が俺の家に来ているんだ。そう、思ったが、俺の目には衝撃的な物が写った。
「ちょっと!遅いじゃない!月夜君!」
そうである。なぜか、俺の家に神久夜が居たのだ。それも、パジャマ姿で。
「なんで神久夜が俺の家にいるんだよ!?」
「なんでって、私、これからここに住むんだもん」
俺は唖然とした。こんなアニメや漫画のような事があるのか。そうだ、これはなにかの夢だと言わんばかりに俺はほっぺをつねった。
だが、目の前にはお風呂上がりの神久夜が居た。
「もう、いいかな」
俺は思考を放棄した。
「ん?いい匂いがするんだが、なにか作ったのか?」
「ええ、月夜君が帰ってくる前にカレーを作ったの!」
なんと!あの神久夜が料理を作っているではないですか!
「神久夜が作った料理か、、、毒とか入ってないよな?」
「なによそれ!私をバカにしてるの!?」
「とりあえず、早く食べるないと冷めるわよ!」
と言われたので、荷物を片付け、イスについた。
そして、ついに神久夜の作ったカレーが出てきた。だが、それは、、、
「、、、なぁ神久夜、これは一体なんなんだ?」
「なにって、さっき言ったじゃない、カレーよ」
俺の前に出てきたのは、匂いはカレーそのものだが、見た目は完全にドブのようなものだった。
色は紫で、具材はなにもされていない物ばかり、オマケになにかうねうねと動いていた。
「こ、これを、俺に食えと?」
「そうよ、当たり前じゃない」
神久夜は平気な顔で言う。
「神久夜、お前実は料理したことないな?」
「な、な、なにをいっているの、や、やった事ぐらいあるわよ」
明らかにやった事がないようだ。
と、ここで俺は閃いた。神久夜への復讐の内容を。
「なぁ、神久夜これ一口食べてみないか?」
「い、いいわよ?食べてあげる」
食い付いた。
「じゃあ、いただきます。」
神久夜がカレーを口にした瞬間。
神久夜は真っ青になりながら、何とか飲み込んだ。
「うっ、なにこれ、カレーの味じゃない」
予想どうりの反応だった。
だが、このままだったら俺はおろか、神久夜もなにも食べるものがない。
そう考えた結果。俺がなにか作ることにした。
「仕方ない、おれがカレー作ってやるよ」
「ほんと!!やったー!」
そんな子供みたいにはしゃぐ神久夜を見て、俺は不覚にも笑顔になってしまった。
「ほら、できたぞ。お目当てのカレーだ。」
目をキラキラさせながら神久夜がカレー見ていた。
「やったー!いただきまーす!」
神久夜は俺のカレーを食べて、美味しかったのか、勢いよく食べていた。
「ごちそうさま!美味しかったわよ!」
素直に嬉しくなってしまった。
「こんなにも美味しいものを食べたからには、なにかご褒美をあげないとね」
そう言って、神久夜は俺に馬乗りになった。
「な、なにをしようとしているのかな?神久夜さん?」
「なにをって、すっごく気持ちいいことだよ?月夜君♡」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。