健人Side
しばらく経って。
「佐藤さんのお連れの方ー」
座っていた皮のソファーから立ち上がり、案内された方へ歩き出す。
足が重かった。心配しすぎて、疲れていた。
頭痛のほうも正直、限界で...
小さな個室の白いベッドの上に、ぽつりと寝かされていた勝利。
なんだか、腕やら胸から管が何本も出てきていて、不安が募った。
命に別状はないが、症状が酷かったため、4日の入院が決定したことを医者は告げ、部屋を去っていった。
目の前がぐにゃっと歪んで、膝の力がフッと抜けた。
「っと!あぶね...........座れよ早く。フラフラしてるぞ。大丈夫か...?」
菊池が支えてくれた。
「いや......マジビビった......。俺、恐怖で死にそうだったわ.......」
「ははっ。めずらし。てか、死にそうだったのは勝利だろ。おまえがいなかったら、こいつ死んでたかもな.......ほんとに。」
「菊池..少しの間、寝てもいい...?」
「うん。休みな...。お前まで倒れたら困る。」
その後、聡とマリウスにも連絡し、全員が病室に集合した。
入院中の荷物を整理していると。
「あ!勝利くん起きた!」
「マリウス声でかい!ここ病院!」
すかさず聡のツッコミが入る。
「..........あ............」
「ここ病院。もう苦しくない?」
俺の問い掛けに対して、わずかに頷いた。
先生を呼んできて、状態を見てもらい、酸素マスクが外された。
再び五人になって聞いた話。
走って帰っていると、寒気と息苦しさに襲われ、動けなくなったこと。それでもなんとか公園に辿り着いたが、指が震えてスマホの操作が難しく、どんどん時間が過ぎていった。
やっと俺に連絡がついた頃は、苦しすぎて記憶が曖昧で。
ずっと誰かの声は聞こえてたけど、救急車に乗ったことなどは覚えていないらしい。
入院一日目の夜に発熱した勝利だったが、その後は順調に回復。
無事に退院することができた。
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勝利Side
数週間後。
「あ、止んでる。」
電車から降りた俺は、しっかり持ってきていた傘を握りしめた。さきほどまで降っていた雨はもう止んでいる。
「わ.............すげー............」
改札を抜けた俺は、思わず声をあげた。
山の向こう側で、俺を待ち構えていたのは、
鮮やかな七色の虹だった。
END
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。