健人Side
今日は俺だけ仕事が休みだった。
俺以外、みんな仕事に行ってる。
いつもなら、掃除したり恋愛ドラマ見たりするんだけど...
今日は朝から偏頭痛が酷くて、
薬を飲んでソファーで休んでる。
夕方...
頭が痛いとはいえ、一日中休みだったんだから皆のご飯作ろうかな...
でもまっちゃんとマリウスは夜ご飯食べてくるって言ってたしな...
作るとしたら菊池と俺と勝利の3人分か...
冷蔵庫にある食材で出来るものを、テレビを見ながら考えていた。その時。
ぴりりりり♪
スマホが鳴った。画面には、勝利 と表示されている。何の用だろ........
「ん?どしたー?」
「..........はぁっ.........はぁっ..........ひゅーーーっ」
??????
なに?聞こえてくるのは、雨の音と怪しい呼吸音。いたずら電話かと思ったけど、よく頭を整理した。
「勝利.......?だよね?どした?今どこ。なんかあったの?」
「.....ひゅっ......け....ん.....はっ.....はっ.....ひゅー....ひゅー........ごほごほっ!...はや.....く.....げほ!」
俺は自分が頭痛いことも忘れ、ソファーに置いてあった黒いパーカーを掴んで家を飛び出した。
スマホは通話状態のまま、耳にあてながら走っていたけど、聞こえるのは苦しそうな呼吸音だけ。
勝利がいつも通っているはずの駅までの道を走る。
自分の場所も状況も説明できないくらいの状態だった。
まずいかもしれない...........
慌てすぎて傘を忘れてきた。髪がぬれていく。
人が全然通らない住宅街を、ひたすら走る。
小さな、ぼろい公園を通りすぎようとして足を止める。入口近くの、屋根がついた机と椅子のところに彼はいた。
「勝利!!!」
スマホを握りしめたままの腕と頭をグッタリと机に預け、全身を震わせながら呼吸をしていた。
びしょぬれの制服にパーカーをかける。
肩を揺らしながら名前を呼ぶが、目を開けない。
顔が真っ青だった。
「....ひゅーーーっ..ひゅーーーっ......け...ひゅっ.........と.....ひゅっ....ひゅっ...く...ん.....ひゅーーーっ」
もうまともにできていない呼吸の間に、俺の名前を呼ぶ。
俺のスマホと勝利のスマホを、椅子に置いてあったかばんにぶち込んで、冷たい身体をなんとかおんぶした。
力を振り絞って、今走ってきた道を戻る。
背中にいる勝利の息が、今にも止まりそうで怖かった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。