第5話

親子藤四郎_カランコエの回想_
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2025/01/02 15:56 更新
     「なぁ、こんな所に花壇なんか作って何植えんだ?」
陽の光に照らされた黒曜のように美しい短髪がチラリと見えた
体が上手く動かせない…
                          「ん〜?なんとなく、だ」
黒百合のように艶やかな髪をサラリと風になびかせた少年が黒髪の少年らしき人物の問いに軽やかに返答する
(あ、…)声を出そうにも上手く出ない
それにもしかしたらあの二人、いやあの2振りは…
  「強いていえばこの本丸に幸福を呼んでくれる花…だな」
「はは、お前にしたら珍しいな!」
゙薬研藤四郎゙ と ゙厚藤四郎゙…?
どちらも毛色の違う黒髪短髪の美丈夫だが
見間違えるはずもない、兄弟だ
だが近くにいるのに自分は動けない
話しかけようにも声が出ない
口が動かない
何故なのだろう…?そしてここは何処なのだろう…?
もしかして、あの誰もいなかった本丸の…??
考え込んでいると急に体、いや視線が動いた
口が勝手に開き出す
               「薬研、もしかしてお前わかってるのか」
子供にしては低く、青年にしては高い
まだまだ未成熟な少年の声が喉から伝って声と成る
そこでやっと愚鈍な自分は気づく
これは誰かが見たかつての記憶の追想なのだと__
                                   「ん、何がだ?」
      「もしかしたら審神者の_______が___!」
何故か自分が完璧に模倣したはずの音はノイズとなり
まるで今は聞いてはいけない、真実を知ってはいけない
と警告しているかのごとく全て抜け落ちた
その言葉を受け取ったと思われる厚藤四郎は目を驚愕の色に染め上げ信じられないといった表情で見つめてくる
しかし薬研藤四郎はその儚げな笑顔に全てを隠し返してきた
まるでその通りだと、覚悟していると
言っているかのようだった
そして突然場面は切り替わる
まるで記憶が丸ごと飛んでしまったかのようであった
そこにはボロボロの薬研藤四郎と片腕のない一期一振、重傷と見られる鯰尾藤四郎がいた
薬研藤四郎は己の体の状態を気にすることなく必死に一期一振の片腕から漏れる鮮血を逃がすまいと鬼気迫る表情で止血を試みている
一期一振は己の傷の深さに苦悶しながらも決死と言った表情で手を止めない薬研藤四郎に声をかけている
鯰尾藤四郎は入口に近い壁際に背中を預け俯いたままピクリとも動く様子はない
そこはまさに戦場であった
ついさっきまでそこの庭先で土いじりしていた花壇は見るも無惨話すも億劫な有様で花壇とはもはや分からない様相に荒れていた
ここで何があったか
親子藤四郎は当時を知らない
今はただそこに有る本を見ているようなだけ
歴史の本を手に取りこういう事象があった 

という過去を見ているだけ
既に起こってしまった事柄を追走しているだけ
何も変わらない何も分からない

そんな状況で親子藤四郎はこの顛末を見届けることにした
 「薬研、もうやめなさい!この傷は深い。その止血だけで十分だッ!!」
「舐めんな!やめないぜ!これでも俺っちは戦場育ちなんだ」
「お前もボロボロだ!夜の室内に不利な私よりもお前の方が役に立つ!傷を塞いで早く主殿の元へッ!!!」



                          「ふざけんじゃねぇっ!!!!」



焦る一期一振
思い伝わらない薬研藤四郎
そしてついに緒が切れてしまった
ボロボロと大量の涙を零しながら嗚咽を抑え話す
「俺っちだってッ…粟田口だッ!粟田口吉光が誇る短刀が一振ッ!……燃えてこの身定かではないかもしれないが!兄弟の役に立ちたい思いで未だ戦場に踏みとどまってる!!主と兄弟は同じくらい大事だッ!!だからッ……!!」

                      だから少しでもその傷の手当をさせてくれッ…

                                       「ウッ…ってて…」
涙しながら全てを暴露した薬研とその言葉を聞いて意識を問いただされた一期、そしてその場にいただろう記憶の持ち主はハッとした表情で声の主を見る
                                       「鯰尾!/ずお兄!」
                「もぉ〜2人の声で起きちゃいましたよ〜」
怪我人のいる場所で痴話喧嘩はやめてくださぁーい
と人の良さそうな笑みで2人の仲裁をした
その笑顔の下にある体は白い柔肌が晒されていて腹部に大きな刀傷があり、臓物の類が見え隠れしていた
「ずお兄まだ休んでろよ!その傷は流石に手入れじゃないと治らない!!」
自分の口から音の違う声が伝う
「それにずお兄!主もすぐには来れない!俺っちもその傷を今の状況で応急処置することは出来ない!!安静にして…」
                       「それでも俺らは主さんの刀だよ」

「主のために折れる覚悟なんざとっくにしてますよ」
秋の陽光のように優しげで明るい微笑みであった
そして枷の着いた体を翻し夜の闇へあっという間に消えていった
ついのぱしてしまった一期一振の手は大海を泳ぐ鯰を捕まえることはできなかったようだ
一期は残された片腕を戻しその掌をじっと見つめる
そして再度覚悟を決めたかのようにグッと1度握りしめる
薬研と自分の視線は闇の中へ溶け込んでしまった鯰尾藤四郎の行方に釘付けになっていて気づかなかった
一期一振が止血していた包帯を使い自分の手と刀の柄を縛っていたことに
                                    「お前たちは主の元へ」
粟田口筆頭としての姿がそこにあった
粟田口吉光唯一が太刀、一期一振
彼もまた鯰尾藤四郎のように夜の闇を分けいるようにして外の世界へ消えていってしまった
今此処にいるのは自分と薬研藤四郎
薬研藤四郎の顔を見ることが出来ない
彼は今どんな表情をしているのでしょうか…
                             「…ッハ、みんな勝手だよな」

俺っち治す側の気持ちなんて聞いてもくれない」

「ただそうだよな、刀としての本文を果たさなきゃな」


                                              なぁ
               刀としての本文を果たせなかった俺っちに
手柄を譲ってくれないか
                    確かに俺っぢ達゙は守刀が役目だが
                       短刀でも戦場をかけていいだろ?


                                     〖後藤藤四郎〗

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