司会者の芸人さんが私に話を振ってくれる
客席を見ると、下を向いている人がたくさんいた
目を赤くしたり、中には泣いている人もいた
…………私の熱愛報道でショック受けてんのかな、ごめん
でも熱愛とか嘘だから
これでファンのみんなが安心してくれるといいんだけど、
ヒロミさんが私の心を読んだみたいに話をする
一応、弁解はした
収録後、Twitterを見ると炎上どころじゃなかった
「見損なった」 『隠し事にも限度がある』 「藤咲藍、担降りします」
こんな言葉が永遠と並んでいた
時々、私の味方と思われる書き込みがあるけれど
やべぇ、会見開かないといけないパターンじゃん
早めに事務所へ行こうと思って廊下を走った
ドンッ!!!
思わず立ち止まる
曲がり角のところで誰かが飛び出してきた
…………誰だ?
なんだ、コイツか
無視して立ち去ろうとした
パーマのおろした髪が余計うざったい
急に声がひくくなって、私を睨み付ける
思わず背中に冷や汗が流れる
「ヤってくれ」って、そんな私が欲しいか?
多分この人、藤咲藍と結婚っていう肩書き欲しいんだろうな
終わったな、私
誰かが廊下から出てきた
なんでヒロミさんがここに?
頭ん中、疑問だらけだ
ヒロミさんがスマホを操作する
さっきの桜木穂花の声がヒロミさんのスマホから流れる
桜木穂花は下手な舌打ちをしたあと、スカートの下をチラチラ見せながら走って行った
………どんだけ一生懸命走ってんだよってね笑
パンツ見えるくらい走り方が凄かった
そう言ってヒロミさんは廊下を戻って行った
次の日、桜木穂花が謝罪、証拠の録音テープが放送された
Twitterでも私を叩く人はほとんどいなくなっていた
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。