慶side
俯き加減だった貴が突然此方をみる
凄く見つめられているのだが…
貴「けーい、やはり疲れた!どうしてくれるー」
慶「もうー、すまないって」
貴「許す代わりに今日の支払は慶だから」
慶「仕様がない…って!何時も俺が払ってるよね!?」
貴「慶が誘うから」
慶「それはそうだけど…」
貴は俺の弟みたいな存在だから
甘えられたらついつい願いを聞いてしまう
慶「…承知した、好きなだけ呑め!」
貴「やったね、有難たい」
笑顔、戻った…良かった
このように我儘を言うこともあるけれど、俺の勝手な振る舞いも許してくれる
何時も有難う
「「お出でなんし」」
不意に障子の外から聞こえた廓詞
高く澄んで、蜜のように蕩けそうな甘い声と
低く掠れて、何とも言えない色気を含ませた声が
俺達の耳を擦る
俺も貴も、何かに口を封じられたかのように返事が出来なくて
でも、其の声に
どうしようもなく心が惹かれる
貴「……慶」
貴「慶?呼んであげて」
慶「自分で呼べよー」
貴「無理、嫌だ、呼べない」
もう
慶「申し訳無い、お待たせして。お入り下さい」
会える、かな
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!