駅で翔真と別れて、一人で歩いていると、道の向こうに見慣れた後ろ姿があった。
……咲奈!
後ろから呼ぶと、咲奈は長い髪をふわりと揺らして振りかえった。
里奈。
早かったね
咲奈は私を見ると、笑顔を向けた。
……その笑顔に、胸がチクッとする。
……咲奈、
久しぶりに河川敷の方を歩きにいかない?
ちょっと遠回りしたいんだ
河川敷に?
いいよ
* * *
夕暮れの河川敷は、空も水面もオレンジ色に染まっている。
ここに来るの、久しぶりだね
うん
私たちの間を、秋の風が吹き抜けていく。
気持ちよさそうに隣を歩く咲奈の横顔を見て、
……咲奈、ごめん
え?
さっき、翔真から聞いたの
三上くんと別れた本当の理由が、……私だったこと
勇気を出して切り出すと、咲奈は少し困ったように笑った。
あ……、
翔真くん、里奈に話しちゃったんだ
里奈には言うつもりなかったんだけど……、
いつかはバレちゃうよね
肩をすくめた咲奈に、私は思い切り頭を下げた。
咲奈、本当にごめん!
今さら謝ったって許されないけど……、本当に悪いことしたと思ってる
えっ……
突然謝った私に、
咲奈はとまどいの声を上げる。
やめて、里奈は全然悪くないよ。
無意識のうちにしちゃったことなんだし……
そんなの言い訳だよ!
無意識だろうと、咲奈の彼氏に迫るなんて、サイテーだよ!
本当に……、ごめんなさい
声を振り絞るように言うと、
咲奈はそっと私の手を取った。
……里奈、とりあえず顔を上げて?
私は、ゆっくりと顔を上げて咲奈を見る。
里奈、私ね、全然里奈のこと恨んでないよ。
たしかに、別れたときは辛かったけど……、それはしかたないよ
里奈は心変わりしてしまうほど、魅力的な女の子だから
咲奈?
何言ってんの?
本当のことだよ
私、ずっと里奈がうらやましかった
……え?
一瞬、耳を疑った。
他人に流されない強さがあって、自分の意見をしっかり言える里奈が、ずっとうらやましかった
普段は男子と距離を置いていても、里奈が本気になれば、誰だって里奈に夢中になる
見た目の雰囲気だけで私に寄ってくる人も、しばらくすると里奈の魅力に気づいて、みんな私から離れていくの
そんな……
本当に男子にモテるのは、里奈だよ
そんなことない!
私なんかより、咲奈の方がずっと素敵な女の子だよ!
咲奈はかわいいだけじゃなくて、誰よりも優しい心を持ってる
私だって、ずっと咲奈がうらやましかった。
意地っ張りな私と違って、咲奈は素直で女子力も高くて……
咲奈に告白した男子がふられて、しかたなく私に告白してくる男子ばっかりで……、それが理由で男嫌いになっちゃったし
これまで思っていたことを、初めて咲奈にぶちまけると、
里奈は、そんなこと思ってたんだ……
咲奈が苦笑する。
……私たち、ないものねだりしてたのかな
……だね
翔真と徳真も、そう。
それぞれ魅力があるのに、お互いに相手のことを、うらやましく思ってる
双子の宿命なのかな。
いつもお互いを意識して、比べて、ないものねだりしてるんだ
うん。
里奈は全然自分の魅力に気づいてないもんね
咲奈だって!
こんなに完璧な女子、他にいないから!
私たちは顔を合わせると、どちらからともなく笑い始めた。
ひとしきり笑い合ったあと、
……私、咲奈と双子でよかった
私も……!
里奈と双子でよかった
お互い顔を見合わせて、照れ笑いした。
……だからね、
私、今度こそ咲奈には幸せになって欲しいんだ
いきなり、どうしたの?
これからは、徳真と咲奈がうまくいくように、私が全力で応援するから!
私は自分にも言い聞かせるように宣言して、
ニッと笑って見せた。
あ……
咲奈は赤くなって、口に手を当てた。
だからね、今後、帰る時に組み合わせを変えるのをやめない?
私はこれから、翔真と帰るようにする
あと、徳真に勉強を教えてもらうのも、咲奈だけにしてもらって……
里奈、ごめん!
咲奈が私の言葉をさえぎって、手を合わせた。
咲奈?
いずれ言おうと思ってたけど……
私、翔真くんと付き合ってるの!
翔真と……って、
え? ええーっ!!??
夕暮れの河川敷に、私の叫び声が響き渡った。
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