ザザァン… ザザザァン……
陽向がこの世を去ってしまってから約5年が経った今。
俺は陽向と出会った海に来ていた。
大学4年生となった今だけれど、陽向のことを一度たりとも忘れたことはなかった。
太陽のように輝く君のその笑顔は。
たくさんの人を幸せにできるのに…
たくさんの人を笑顔にできるのに…
俺はあの時のことを思い出し、涙がこぼれ落ちそうになった────
誰かが俺の名を呼んだ。
陽葵さんと陽太さん、陽介の長谷川兄弟が揃っていた。
陽葵さんはそう言いながら俺に近づき、バンバンと背中を叩いた。
3人ともあの時よりもさらに大人っぽくなっている。
特に陽介なんかは20cmぐらいは身長が伸びているんじゃないかと思う。
俺と同じぐらいの高さだ。
そう答える陽介の声もすっかり声変わりをしたようでかなり低くなっていた。
コロコロと表情を変えるようになった陽介達と話をしていると、おもむろに陽太さんが口を開いた。
陽太さんはポケットをゴソゴソと探った。
そして、一通の手紙を取り出した。
それを俺の目の前に差し出す。
そこには────
“翔君へ”という宛名が書かれていた。
そして陽太さんは俺の手を握り、手紙を俺の手に握らせる。
俺は手紙を受け取ると封筒を開け、中身を開いた。
そこに書いてあったのは────────
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。