私はそう提案した。
すると、翔君は目を見開いた……かと思ったら、パアッと弾ける笑顔になった。
変なことを言われた私は、思わず変な声を出してしまった。
自分では全然自覚していなかった。
翔君はそう言うと、歩き出した。
もうすぐ花火が打ち上げられるからなのか、人がどっと押し寄せてきた。
翔君の姿があっという間に見えなくなってしまった。
私が翔君を探してキョロキョロしていると…
ドンッ
誰かに押されて転んでしまった。
足がズキズキと痛む。
…どうやら捻ってしまったようだ。
私がこれからどうしようと迷っていたら…
────知らない男が声を掛けてきた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!