翔side
花火が終わる少し前のこと。
俺は、足を怪我した陽向をおぶって人気が少なく花火がよく見える場所に向かっていた。
陽向は、俺の首にかける手に力を込めた。
優しい声で、そうささやくもんだから、俺の耳は真っ赤になってしまった。
…まぁ、暗闇にまぎれて陽向には見えていないようだからいいんだが…
陽向の方から話しかけてくるなんて珍しかったから声が裏返ってしまった。
何を言われるのかとついドキドキしてしまった。
俺の首に息が当たった。
……ホッとしているのか…?
俺が考えを巡らせていると、陽向は次の質問に移った。
また俺の首に息が当たった。
……今度は…感心した…のかな?
陽向は最後の質問に移った。
…まさかそこを突かれるとはな…
目的地に着いた。
俺はゆっくりと陽向をおろした。
そしてまっすぐ見つめた。
────俺の気持ちをまっすぐ伝えるために…
ドォンッ…ドォォンッ……
遠くで花火が打ち上がっている。
…まるで、俺の気持ちを後押ししてくれているかのように。
…ドォンッ……ドォンッドォンッ…
とその時────
ドォォンッ…
────両思いで見たら永遠に結ばれるというジンクスがある、二尺玉の特大花火が打ち上がった…
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。