そう流そう。
そう思ったら
じゃっ、と左手を上げて玄関へと行ってしまった。
玲於も…先輩と!?
えええええ
それじゃ、意味ないじゃん!!!
私は急いで涼太くんの元へ走る。
私の玲於との時間があの先輩によって削られていく…
そう考えるだけで寒気と吐き気。
やだ、!
玲於取らないで!
そう言いたい。
もう、ショックすぎて声も鼻声で目も腫れて…
涼太くんは私の手を引っ張ると玄関に走る。
…揺れる…髪の毛。
あの時…玲於が…
涼太くんを玲於に置き換えるという最悪なことを
考えてしまった自分に腹が立つ。
玄関に着くとやはり、混雑、
あ、行こ!
と私の手をまた握って人混みに入っていく。
全然すいてないのに ~ 。
やっと、自分の靴箱を発見して靴を取り出す。
それだけでも一苦労なのに…
と、一気に奥から押されて雪崩のようになる。
涼太くんの声が掻き消された。
何だこの学校は!
雪崩が収まるとみんなグチグチ言ってる。
思ってることは同じなのだ。
上履きを靴箱に入れようと足を見ると片っぽない。
こんな混雑した中で私の1足の上履きを見つけるなんて無理。
人が引いてからじゃないと…
靴箱にへばりついて待ってると
ブラブラと手からぶら下げてる私の上履き。
玲於が見つけてくれたんだ!!
受け取ろうとするとピュッと上に上げられた。
またもや、想定外!
これは うん と答えるべき?
それとも違う人を答える?
も ~ 、わかんない!
すると涼太くんの姿を見つけ助けを求める。
玲於はまだ私を見つめるまま。
見つめないで ~ !!
穴空いちゃう。
ハートのおっきい穴。
きたきたぁ!
芝居の上手さは褒め称える。
一言だけ残すと私の上履きを靴箱に入れてくれて
何も言わず外に行ってしまった。
私は呆然として立ち尽くす。
二人で猛暑の中歩く。
暑い…
玲於とちゃんと話せてないし…
触れ合ってもない。
今までは日常的に私が触りまくってたのに。
こんなに好きな人が不足すると人って価値を無くすんだなって思う。
前を見てちょっとだけ微笑む。
しかし…玲於たち一緒に帰ってるんだよねぇ…
やだな。
モヤモヤして仕方ないし…
先輩、玲於のこと好きになっちゃって付き合ったら?
もう、私病むよ?
不登校になる。
別に行きたくて来たわけじゃなく。
ただ、玲於を振り向かせれるならってことだから。
気持ちはわかるよ。って私の肩を叩く。
涼太くんは優しい。
例え、玲於だったとしたら今頃ぶちギレてるだろうなぁ。
それを私が追って仲直りするの。
いつものパターン。
ニコニコスマイルで私に笑いかけてくれた。
私の手を取って歩く。
ん?
手を繋ぐのは仲良くなるために必要?
出た、S涼太!
なんだかんだ言って受け入れてる私もどうかと思う。
玲於と…手繋ぎたい。
なんて言ったら玲於は嫌そうな顔をして私から逃げてく。
そんなことは既に目に見えてるからなんとも思わない。
と言っている間にアクセサリーショップに到着。
私の見たいもの…
それは、ピアス。
玲於とお揃いにって思った。
はぁ ~ 、玲於どうしてるかなぁ。
俺のことだけ考えてればいいの。
そういうからちょっとドキッとした。
本当に玲於は私のこと好きになってくれるのかな。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。