あなたside
朝から体育。
気分は朝から乗らないまま1時間目に移動。
いつも玲於玲於叫んでうるさい私が
今日は静かだと先生が言い、何かあったのかと聞く。
先生に言ったらどうかしてくれますか?
今すぐ玲於の記憶からあの女の人を決してって言ったら
消してくれるの?
けど、玲於の自由を奪いはしたくない。
体育館でバタンと寝転がる。
私だって元気いっぱいに体育したいもん。
けど、体が言うことを聞かない。
玲於とあの女の人のことで頭がいっぱい。
もちろん玲於のことはだいすき。
けど、大好きでいていいのかなって思う。
玲於にとって私が邪魔じゃないかなって。
聞くって言ってもなんて聞くの…?
" 玲於って好きな人いるの? "
なんて、緊張して聞くにも聞けない。
いるよ、って言われたらどうしよう。
ま、いるのが現状なんだけど…
逆にいないよ、って言われたら反応に困るし。
も ~ !いや!
頭痛い…
.
下校時刻。
胡音がいなくなる教室はちょっと心細い。
玲於迎えに行かなきゃ…
ちょっと気が引ける…な…
でも、行かなきゃ始まらないし…
一緒に帰れないし…
カバンを持って三組に向かう。
ドアから覗くとやはり女の子に囲まれる玲於。
昨日まではこんなの嫌だった。
玲於に近づくな!!!!
って思ってたけど…今日の見ちゃったらなんか甘く見える。
いつもなら周りに引かれるぐらい声が出るのに出ない。
大好きな人の名前を呼べないんだよ。
こんなに辛いことない…
呼ぶとちらっと私を見て右手をちょっと上げた。
頬が緩む。
こんな仕草でも私はにやけてしまうなら好きだ。
やっと時間がかかって私の所にだるそうに来た。
いつもみたいに玲於の横を歩く。
そしていつもみたいに携帯をいじってる。
慣れてるのに…
こんなのなんとも思わないのに携帯なんか見ないで
って…思う。
外に出ると暑く、蝉の音がより暑さを感じさせる。
おっと危ない。
私の性格上玲於の事でもなんでも言っちゃう性格。
玲於に好きな人がいて困って集中できなかった
なんて言ったらどう反応する?
俯き加減で言う。
素直に言えないってこういうことか…
知ってるも何も有名な先輩だよ!!!!?
3年生の先輩で
学校一美人の先輩。
" 電車で会ってさ "
それって…玲於の目で追ってた人…?
それってもう…
…やっぱり。
やばい、泣きそう。
今は元気に接してみる。
ここまでバカしないと目から涙出てくるもん。
ここで泣きたくない。
玲於に気使って欲しくないし。
照れたように後頭部を掻く。
癖だもんね、玲於の。
すると玲於が私の頭に手を乗せて
笑って目がなくなって白い歯を見せて笑う玲於。
そんな顔して私を見ないで?
辛いじゃん…
好きだから打ち明けてるだけ。
私にとって凄いことじゃない。
だって、玲於、私の気持ち勘違いしてるから。
余計に難しいんだよ!
今まで言いたかったことを凝縮していえた気がする。
ありがとな、
ってだいたい意味はわかるけど…
涙なんかもう乾燥して無くなった。
出そうとしても出ない。
まだ、チャンスはある!!!
付き合ってないなら尚更。
歩く道の端に来てそう叫ぶ。
玲於もカッコイイもん、先輩も好きって言われたら
いいよ、って答えちゃいそう。
私が聞かなくても玲於が答えてくれた。
あ、これも…玲於の優しさ?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。