あれから胡音の元気を取り戻そう会を開こうと
駅前のカフェへ歩いて向かう。
ここ混むんだよなぁ ~ 。
…胡音、相当ショックなんだろうな…
顔が暗い。
そう笑った胡音の目からは一粒の涙。
我慢してたんだ。
辛かったよね…
好きな人に振られるの…
私も…同じ気持ちだから。
長い道のりはあっという間。
5時前にやっとカフェに着いた。
もう人は減っていてラッキーと思った時。
目の前で玲於と先輩がキスをしてるのを見てしまった。
頭の中はパニック。
玲於が?
先輩と?
付き合ったと知らされた以上に困惑する。
見たくないのに目はなかなか他を見させてくれない。
私を涼太の大きな体で包む。
私をあの光景を見せないよう。
その優しさとショックで涙が溢れる。
大丈夫、大丈夫。
と涼太くんが私の頭をトントン。
今日は胡音を元気にさせるために来たのに…
なんで私がまた落ち込んでるの…!!
ほんとバカ。
もう嫌。
けど、このままだと…私…ダメみたい。
涼太くんから離れて
そう伝えて走った。
涼太くんと胡音が止める声も聞こえたが私は走り続けた。
走ってる最中でも玲於と先輩のキスがリピートされる。
嫌なのに…
忘れたい。
けど、、忘れたいと思うほど脳に濃く記憶されていく。
どんなけ走ったかわからなくなるまで走った。
疲れなんて知らない。
いつの間にか疲れていた。
電車に乗って駅のホームを抜け家の近くの公園に来た。
少人数子供が遊んでる。
私はベンチに座った。
変なところ見ちゃったなぁ。
しかも、キスとか。
玲於はしないって思ってたのに。
私の独断と偏見で選んだ玲於の印象。
…辛いな。
太ももに手を置いて徐々に力が強まる。
…ダメみたい。私。
諦めようと思うと逆に諦めきれなくなってきてる。
私の中で玲於は必要不可欠なんだ。
涙をこぼしてそう叫ぶ。
子供たちに変な目で見られても仕方ない。
今の私には周りを気にすることが出来ない。
…嫌い!
大っ嫌い。
玲於なんか…どこでも行けばいい…
最後に叫んだその言葉で私の心は
スっと何かが抜ける感じがした。
ストンとベンチに座る。
もう玲於を追いかけ回さない。
玲於も迷惑だろうし…
ただの幼馴染としていよう。
普通の幼馴染。
今までの私は度が過ぎていたのかも。
よしっ、帰ろっと。
立ち上がって後ろを見た時。
そこには肩で呼吸をする涼太くんが立っていた。
涼太くんがここまでしてくれる必要なんかないのに。
私は耳を疑った。
涼太くんは私に近寄って私を抱き締めた。
さっきとは違う力の篭もったハグ。
離れたかと思ったら上から見下ろされるように
全然知らなかった…
涼太くんの思いなんて…
全然理解できない。
今までの涼太くんではない表情。
頬を赤く染めた涼太くん。
家まで送ってもらいさよならした後
家の前でちょっと考えた。
涼太くんが…?
私のこと…
好き…?
…?
好き!?!?
やっと把握出来た脳。
その瞬間、頬はボブっと赤くなるのが分かる。
熱いもん。
手をパタパタして顔を仰ぐ。
くるくる回ったりして現実かどうか確かめてる時。
…出た。悪魔。
私は素っ気なく 別になんでもない そう答え家に入った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!