玲於side
俺の大っ嫌いな朝が来てアラームがなる。
この流れは慣れたものの…やはり好きにはならない。
下に行って髪の毛直してご飯食べて出発。
外で待ってるとやっぱり遅い。
何してんだよなぁ。
あなたの家のドアが開いたと思いきや
なんだ、風邪ひいたの。
大丈夫なのかよ。
あなた風邪ひいたり熱出すと長いから。
心配する。
慣れない一人の登校。
いつもはちっさいのが横にいてウザイほどニタニタしてるのに
今日はそんなやつがいなくて静か。
俺の今が普通なはずなのにあいつがいたら普通を越えるから
余計に寂しく感じる。
ん…?
寂しくなんかないぞ?
ただ話す人がいない、ただそれだけの事。
電車もいつもより余裕を持って乗ることが出来て
電車の席も横にスカスカ。
詰めてくる人がいないってこんな感じなのか。
イヤホンを耳に入れ音楽を聴く。
ダンスのイベントがあるからそれの音源。
音を頭に叩き込む。
そして、ゆっくりと動き出す電車。
いつもよりゆっくりと穏やかに感じる。
音楽もすんなり入ってこないし
自分の世界に浸れない。
なんだかむしゃくしゃしておかしい。
" 左のドアが開きます "
俺の座る横のドアが開いた。
ちらっと横目で見るとあの香り。
ふわんと柔軟剤の香り。
何故か鼻に焼き付いてしまって覚えた。
目の前に座って本を読み出す。
そんな先輩の読み姿はとても絵になる。
読んでて不意にニコッと笑う先輩にドキッとする。
不意打ちって良くない。
ああああああ、こんな時にあなたいないし。
何も考えらんない。
あなたならこういう時どうすればいいかぐらい
簡単にわかってそうだから…
音楽の音量を二個上げて目を瞑る。
今見てしまうとだめだ。
誰かに呼ばれてると気づき前を見ると
隣いい?と天使のような笑顔で俺に問掛ける。
やばいやばい。
可愛い可愛い
人見知り発動してしまう。
あ ~ !!!!
あなた助けてくれっ…
徐々に弾んでいく会話。
案外楽しいかも。
ゆっくりと立ち上がる先輩。
その姿も華やかで凛としている。
なんて言いながらも一緒に降りたから。
良かった
ってどういうこと?
あ ~ 、経験無さすぎてダメだこりゃ。
何もわからん。
学校までの道を慣れない歩幅で歩く。
それもそれで意外ときつい。
いつも一緒にいる子…
あなたしか居ないな。
あなたの話をするとちょっと顔が曇る先輩。
無事学校に到着して校門で分かれる。
渡されたのは一枚の紙。
またね、と天使のような笑顔で去っていった。
モテるわ、あれは。
そう確信した時間だった。
先輩から貰った髪をポケットに入れて玄関に入る。
下駄箱を開けた途端。
ドタドタドタと落ちる手紙。
日常に過ぎないからなんとも思わないけど
手紙って昭和すぎん?
1枚1枚拾う。
今日の手紙の数は6枚。
カバンに無造作に詰め込んだ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!