僕は急いで、あの人の家に向かった。
約束っていうか、命令だけど。
息を切らしながら頼むと、佐川さんは笑った。
……よかった。
ほっとしたのもつかの間。
無理矢理手を引かれて、どこかに連れていかれた。
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佐川さんは機嫌が悪くなって、頬を叩いてきた。
痛い……
たまらなく、痛かった。
次の瞬間、尋常じゃない痛みが全身を襲った。
無理矢理、挿入させられた。
必死に訴えるけど、聞いてもらえない。
時期に、意識がぼーっとしてきた。
痛くて、苦しくて。
涙も、出なくなった。
視界が、真っ黒に染っていった。
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俺は、早苗優馬。
保健室。
……え?
違う。
澪は、授業をサボったりなんてしない、すごく真面目でいい子だから。
だったら、どこに……
振り向くと、澪は保健室の扉を開けて、外から入ってきた。
トイレ?
……なんだ。
良かった。
俺は、完全に親友を信用していた。
何も無いと、思ってた。
悩みとかも、聞いていなかった。
だから、澪は………
俺は、気付かなかった。
あの時の、彼の衣服についていた、ある液体のことも。
彼が、無理して笑っていたことも。
何もかも、気付かなかったんだ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。