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第33話

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カツカツとハイヒールの音が聞こえる。

朝寝坊するのは日常茶飯事の事。それも慣れてきたせいか今日は大遅刻だった。

はぁはぁと一定の呼吸、息苦しくなっていても私は走った。


結ぶこともできないままのボサボサな髪の毛も、真ん中で割れて額を丸出しにしている前髪もどれも気にならず、とにかく駅へ向かって走った。

どうせ遅刻だけれども、少し遅れていくのと大胆に遅れて行くのでは大違い。

1分1秒でも早くいかなければ、今度こそクビがかかっている。

駅に入ると、普段よりも遅いこの時間はあまり人がいないのだと知ったとともに懐かしい面影のある人物が目に入る。

「あ…」

声をかけようにもかけられないのは、私がもう…


すぐそばまで行った。


真横に立っても、君はボウッとしていて私に気が付かない。

俯いたままボタボタとこの溢れる涙に手をかざす。


生きていればいつの日か再開することがあるだろうと思いながら毎日暮らしていたけれど、こんなところで、こんな再開の仕方をすると思っていなかった。

「ねぇ…やっと会えたね」


君は何も言わなかった。

「当たり前か…」



私は顔を上げ、深呼吸をしてから前を向いた。

電車が来るといそいそと乗り込んでいく人たちの後に続いて電車に乗り込む。

変わっていく景色をじっと見つめて、私はため息をついた。


今日でこの景色を見るのも、最後になるかもしれない。

「優…私はちゃんと優の役に立てたのかな」

毎日毎日探していた優を、私はようやく見つけることができなかった…

かつて私が恋をした君だけがまだそばにいて、遠い。


長い間重りとなっている優の存在を、ずっと探していた。そのせいでたくさんの人に迷惑をかけてきた。

「もう諦めなさいよ」

そう言われても諦められなかったのは、自分はいる意味があったのか確かめたかったから。


でももういいか…


私は透明な空を見上げた。








「もう、探すのは諦めました。今日までたくさん迷惑をかけてすみません」


私は、死者の未練を晴らす役割を課せられた死神の女性へ深く頭を下げる。

今日で死神センターでの死神さんの助手というお仕事もお終い。

覚悟を決めた私の表情を見て、死神さんは静かに頷き私の手を引きそらのへのエスカレーターを登っていった。








[完]