優は気まずそうに自分の帰る支度を始めた。
私はその場で立ち尽くして、優が動く音に微かに耳を澄ませた。
少し慌ただしい、今すぐにでもここから消えたいと思っているのがわかる。
「じゃあお先に」
優はいつもよりも元気のない小さな声で呟くように言うと、私の横をすり抜けていこうと身を捩らせた。
「ちょっと待って…」
私は思わず優の袖をガッチリと掴んで睨みつけるように言った。
「明日、国語のワーク提出だよね?」
「え、あぁうん」
「私はもちろん終わってるけど…優は終わったの?」
優は一瞬目を泳がせ、次に上履きをじっと見つめた。
「終わってないんでしょ?そんなんじゃ将来心配だよ…私が付き合ってあげるから終わらせちゃいなよ」
優は驚きを隠せない表情で私を見ると、コクリと頷いてカバンを机の上に置いた。
「きっと未来の優は、あの時私に教わってよかったって思うはずだから頑張るよ」
私は優の横にピッタリと座ると、優のワークを睨みつけた。
優がペン回しをする音が聞こえる。
そして、優の鼓動もいつもよりも早く私の耳に届くほど大きく響いていた。
「恋はしない…でも優のためにできることは沢山ある」
私がそう言うと優は黒い瞳でしっかりと私の方を見つめた。
「だから信じて?優」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー❤︎
宣伝になりますが、こちらに作品良かったら見てください!!
詳しくは宣伝部屋20話を見てください。
宣伝したい理由などを書いています!!
どうぞよろしくお願いします。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。