「…親はいないよ」
「え?」
今更自分の言った言葉に後悔する。
「ご、ごめん…」
「いや、大丈夫」
「本当に、ごめん」
「いやいいって」
そう言いながらも優は寂しそうに笑った。
本当は辛いことぐらいわかっている、でもどうにも出来ない。
「あ、あの勉強手伝うよ」
「え、サンキュー」
優は恥ずかしそうに頭に手を当てた。
空は薄暗くなってカラスが1羽も空に見えなくなった時、優のワークは無事に終わった。
私達は出来るだけそれに方が多く見える前に帰った。
「優、本当にごめんね」
「なんで謝るんだよ…謝られると余計に悲しくなるだろ?」
「それに、お前までそんな顔してたら俺が笑えなくなる」
「えぇ…」
「ていうか、ワーク手伝ってくれただけで償いとしては十分だし」
私は胸がじんわりと暖かくなるのを感じながら微笑んだ。
「優…頑張ってよね!!」
そういうと私は手を振って自分の家へ向かった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!