第5話

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2019/08/31 06:34



「ね、今日、楽しかったね」
「うん、とっても」
「タピオカ美味しかったしー」
「新しいロリータのお店も見つけた……!」

帰り道は、竹下通りをゆっくり歩く。この楽しい時間を、二人とももっと引き延ばしたくて。

「……やっぱり、あずみちゃんは凄いね」
「え、なにどうしたの突然」

口からぽろりと言葉がこぼれて、返事が返って来るなんて思ってなくて、ほんとに無意識だったからパニくっちゃって、わたしは更に余計に喋り続けた。

「え!あの、その、えっとお洋服も作れるし、タピオカの注文も得意だし、大人と喋れるし、あとはえっと」

「なーんだ、そんなことかー」
「え」

驚いて立ち止まってしまったわたしの方へ、あずみちゃんは人ごみの中でくるっと振り返った。キャンディとメリーゴーランド柄のスカートが夢みたいにふわんと揺れた。

「なっちゃんだって素敵だよー。褒めるのが上手で、考え方が大人っぽくて、頑張り屋さん。それにー、かわいい!」
「そんな、あずみちゃんの方が」
「比較論じゃないよ」

あずみちゃんの白い手がわたしのそれを取った。やっぱり、わたしの手は武骨で、ごつごつしてて、かわいくない。声も顔も、もう少し大人になったら……


「かわいくなろうとしてるなっちゃんは、その時点でとってもかわいいよ」



……ああ、ほんとに。

わたしのヒーロー。ロリータ服のヒーロー。いつだって駆け付けてきて助けてくれる。

もう、やだ、わたし、また救われちゃう。



「……え?!ちょっとなっちゃん、なんで泣くのさー!」
「ごめんね、違うの、違うの」
「えっどうする?!タピる?!」
「いらない……」

そうして、わたしたちはいつまでもうるさいまま、原宿駅でJRに乗って、渋谷で別れて、わたしは空色のロリータ服の女の子が見えなくなるまで手を振った。


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