あなたside
なんとなくわかっていたのかもしれない。
さっくんが求めているのは私ではないと言うことを。
私は彼に恋をした。
彼は私を恋人にした。
でも、彼が愛しているのは私ではない。みなみさんだ。
私の中のどこにもいないみなみさんを、彼は求めている。
私は阿部ちゃんに聞きたいことがあった。
「阿部ちゃーん!」
今日は病院ではなく、病院に隣接している阿部ちゃんの家に行った。
「大事な話がしたい」というと、
「明日は休診日だから家のほうにおいで」と言われたからだ。
しばらくして、阿部ちゃんが出できた。
「ごめん、ちょっと散らかってるけど入っていーよ」
机に積まれた紙の山と、溜まった洗濯物は彼の忙しさを表していた。
「忙しいのに、ごめんね。」
「全然、忙しくなんかないよ?」
わかりやすい嘘をつく阿部ちゃんに「そっか」とだけいい、テーブルを挟んで向かい合う。
「で、大事な話って?」
彼が入れてくれた紅茶を飲みながら、私は話始めた。
「みなみさんの話、ちゃんと聞いた。」
「そっか」
「うん」
「あなたは佐久間にみなみのこと忘れて欲しいの?」
「違う、そうじゃない」
「心配しなくても、今の佐久間の大事な人はあなただよ」
「違うの.....」
「じゃあどうしたの?」
「さっくんにさ..........お姉さんっている?」
「え、佐久間は一人っ子だけど.............」
やっぱりそうだったのか.......................
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。