帰宅し、荷物を下ろす。
自分の部屋に戻ると、血が固まったカッターと、血まみれのシーツが目に入った。
冷静に、カッターを捨てる。
シーツは洗おうと思ったが、時間が経ってしまったいるので落ちないだろうと思って諦め、シーツも捨てた。
窓から外を見る。さっくんと初めて会った日の様な。美しい夕焼けが広がっていた。
ピンポーン
突然チャイムがなる。
ドアを開けると、そこには翔太と涼太がいた。
「あなた、ご飯作りに来たよー」
涼太が笑う。
翔太は缶ビールの箱を抱えていた。
「ありがとう」
きっとさっくんが呼んでくれたんだろう。
「翔太、この前はありがとう」
ふと思い出し、お礼を告げる。
「別に、仕事しただけだし… てかお前、腕大丈夫か?」
素っ気なく言う翔太。でも、私の気持ちはちゃんと伝わっている様だ。
「うん、もう大丈夫」
「大丈夫って言っても、無理しちゃダメだからね?」
また涼太が優しく嗜める。
「はーい」
そんな会話をしながら、リビングでゆったりと過ごしていると、さっくんが帰宅した。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!