彼から告白された日から数ヶ月。
季節も変わり、桜も散り、木々は緑の葉をつけ始めていた。
腕の傷も完治し、精神科に通う必要もなくなった。ラウール先生は個人的に私達の家に遊びに来るようになったけど笑
ケーキ屋さんでの仕事も始め、充実した日々を過ごしている。
今日はあの人に会う。遅すぎるよな、と自分でも思った。
でも今日は特別な日だから。ちゃんと話すって決めたんだ。
連絡をすると、意外にもすぐにオッケーの返事が来た。
いつもと違う場所を指定する。
いつものカフェとは違う、少し背伸びした場所に彼を誘った。
予約していた時間に入り、彼が来るのを待つ。
しばらくすると、いつもよりしっかりした服装の彼がやってきた。
「ふっか…」
何から話せばいいか分からなくて、言葉に詰まっていると、彼はいつもと同じ様に笑った。
「久しぶりだな、あなた。急に連絡きたと思ったらいつもと違う場所指定されて、俺プロポーズでもされんのかと思った笑」
「そんな訳ないでしょ笑」
「まあ、今日は俺たちの大事な日だもんな」
「うん」
そう、今日は2人が初めて会った日。私たちは出会ってからずっと、1年に一度のこの日をとても大切にしていた。
しばらく最近の話をしながら談笑する。私が前の仕事を辞めて働き始めたと伝えると、彼はとても喜んでくれた。
お互いにある程度話終えて、少し間ができる。
今しかない。
私はふっかにあっていなかったこの期間、ずっと彼に言いたかった事を口に出した。
「ふっか、あの時は八つ当たりして本当にごめん。それから…
結婚おめでとう。」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。