第89話

#88
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2020/08/02 10:53
そっと玄関の扉を開ける。



さっくんはまだ帰宅していなかった。



ホット胸を撫で下ろし、お風呂にお湯を張りながらシャワーを浴びて、雨水と涙を流した。


温かいお風呂にはいると、再び涙が溢れてきた。




彼が愛していたのは私ではなかった。彼は今もみなみさんを愛し続けていた。



彼が求めていたのも、私ではなかった。彼はみなみさんと送る予定だったありきたりな日常を求めていた。



私は帰らぬ人の代わりでしかなかった。




酷い虚無感と吐き気に襲われ、洗面台に少し胃液を吐く。



体を拭きながら、裸の自分に鏡越しに問いかける。



このままいれば彼と一緒にいられる。




彼はきっと私を大切にしてくれる。




だって彼にとっての私は、「みなみ」さんなのだから。




ある一つの選択肢が頭に浮かぶ。鏡の中の私は、少し苦しそうに顔を歪めたあと、覚悟を決めた顔をした。






そうだよね、自分のすべきことは自分が一番わかってる。





































彼とサヨナラをしよう。





2人の関係に、終止符を打とう。





彼の心の内を彼の口から聞く前に...............

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