救急車の中で、あなたが薄っすらと目を開いた。
「…さっくん…」
そんなあなたの顔をマジマジと見つめる。きっと沢山泣いたんだろう。
彼女は泣きはらした様な顔をしていた。
何か言おうとしたが言葉が出なかった。
そのかわり、あなたの綺麗な方の手をぎゅっと握る。
弱々しくあなたも握り返した。
10分ほどで病院に到着した。
ゆっくりと下される。
車の外には白衣を着た阿部ちゃんが待っていた。
「意識は戻ったみたいだね」
阿部ちゃんは一言だけ言ってあなたを診察室に連れて行く。
俺はただそれを見送って、待合室の椅子に座っている事しか出来なかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。