第62話

#61
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2020/07/23 05:52
救急車の中で、あなたが薄っすらと目を開いた。



「…さっくん…」



そんなあなたの顔をマジマジと見つめる。きっと沢山泣いたんだろう。
彼女は泣きはらした様な顔をしていた。



何か言おうとしたが言葉が出なかった。



そのかわり、あなたの綺麗な方の手をぎゅっと握る。



弱々しくあなたも握り返した。




10分ほどで病院に到着した。



ゆっくりと下される。




車の外には白衣を着た阿部ちゃんが待っていた。

 


「意識は戻ったみたいだね」




阿部ちゃんは一言だけ言ってあなたを診察室に連れて行く。




俺はただそれを見送って、待合室の椅子に座っている事しか出来なかった。

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