第84話

#83
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2020/08/02 06:02
佐久間side


あれは二年前の夏のことだった。



俺は高校時代から付き合っていたみなみとういう彼女とデートの約束をしていた。



だが、俺は寝坊した。起きて時計を見るとすでに待ち合わせの時間から1時間が経っていた。



慌ててスマホを見ると、何件もの不在着信とメールが入っていた。





「もう、大ちゃんまた寝坊したでしょ!迎えに行くから大人しく家で待ってて!」





このメールを最後に連絡は途切れていた。このメールが20分前。



ここから待ち合わせの距離を考えると、彼女はもうすぐ来るはずだ。





「マジでごめん!今起きた!ありがとう!」




一言メールを返して、出かける用意をする。



すべての支度が終わっても、彼女はまだ来なかった。



最後のメールから一時間が経った。来ない。おかしい。遅すぎる。




心配になって電話をするも出ない。何かがおかしい。



慌てて家を飛び出し、待ち合わせのカフェまでの道を辿る。いない。電話も繋がらない。



どうした。なにがあった。



パニック寸前だった俺のもとに電話が掛かってきた。



よかった。ホット胸を撫で下ろして電話に出る。



しかし聞こえてきたのは彼女の声じゃなかった。




「佐久間、いいか?落ち着いてきけ!」




まだ研修医だった阿部ちゃんの切羽詰まった声。



心臓がざわざわと音を立てる。




「みなみが・・・!」



「・・・・!?」



「いいから今すぐ病院に来い!」




慌ててタクシーを捕まえ病院に走る。



頭の中はぐちゃぐちゃだった。



どういうこと、なんで、どうして



答えのない問が頭の中をぐるぐると回る。



阿部ちゃんの言葉が耳に張り付いて離れない。
































「佐久間、みなみが胸を刺されて運ばれた・・・!」






その声が耳鳴りのようにどんどん大きさをまして頭の中で響いていた。

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