君がいなくなって2週間。
俺はまだあなたを求めてる。
君の好きだった夕焼けを1人で見て、君の分の食事も作って机に並べて、一人で食べる。
君がいつフラッと帰ってきてもいいように、いつも通りの生活を送っている。
ふと、君が絶対触るなと言っていたドレッサーが目に入る。
ゆっくり近づいて、引き出しに手をかける。
全部残っていた。誕生日に友達に貰ったというネックレスも、好きなアーティスト直筆のサインも、家族の写真も。
「本当に何も持っていかなかったんだなぁ」
引き出しの奥に、小さな箱があった。俺があげた指輪をしまっていた箱。
勝手に手が伸び、気づけば開けていた。
中に指輪はなかった。
代わりに、小さく折り畳まれた紙が入っていた。
「…?」
『さっくんの1番になりたかった』
そういうことか。俺はあなたを酷く傷つけてしまったんだ。
彼女はみなみじゃない。あなただ。わかっているようで、わかっていなかった。
ごめん、ごめんあなた。
静かな部屋に自分の嗚咽する声が響く。
ふと、どこからともなく懐かしい声が聞こえてきた。
「大ちゃんが幸せにしてあげなきゃいけないのは、私じゃなくてあなたちゃんでしょ?」
そうだよな、みなみ。俺なんもわかってなかった。
ねぇあなた、俺はもう一度あの裏道で君に逢いたい。
そうしたら俺は、今度こそ君を愛すから…………
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。