第66話

#65
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2020/07/24 02:11
「そんなに気張らなくていいから、落ち着いて話そうねー笑」




緊張でガチガチだった私をみてラウール先生が笑う。




何を言われるかと身構えていた私の肩の力が少し抜ける。




どうやら怒られたりはしなさそうだ。





「腕大丈夫?痛まない?」



「はい、今はもう大丈夫です」



「それは良かった」




その後、少しだけ改めまった顔をしてラウール先生が話始める。



「ねぇ、あなたちゃん。俺はさ、あなたちゃんみたいな人を沢山見てきた。中には亡くなってしまった方もいる。どうしてこんな事をしたのか、話せる範囲でいいから話してくれないかな?」




「…絶望したんです。もう私は逃げられない。幸せになんかならないって。」



「どうして?」



「私には家族がいなくて… 高校卒業して施設でてから、1人で生きて行かなきゃ行けなくて。真面目に働いても、生きてくのも苦しくて。それで、自分の体を売ることに手を出したんです。」




「なるほど…」




「でも、そんな自分がどんどん嫌いになって。本当は私も幸せになりたかった… 家族がいて恋人がいて、真面目に働いて生きて行きたかった…!」




今まで心に閉じ込めていた想いが、涙と共に溢れる。





「…それでこんな事を」




ラウール先生の声は、終始優しかった。



 

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