翌日、わたしたちはみんな揃って理事長の前に立った。
その一言で、理事長を取り巻いていた甲冑姿の人々は1歩前に出た。
みなが勝鬨を上げ、戦が始まった。
各所でみなさんが協力して甲冑姿の方々を倒していく。
私とみやびは信長様に守られながら、その光景を目の当たりにしていた。
倒れた甲冑姿の方に家康が叫ぶと、さっきまで倒れていたその方は何事も無かったかのように立ち上がった。
信長様に倒されたべつの方も。
そう言って再び戦闘が始まる。
倒しても倒しても起き上がる戦闘型クローンに、みなさんボロボロになっていった。
突然の悲鳴にそちらに目を向ければ倒れた秀吉の顔に、戦闘型クローンが足を乗せていた。
秀吉を助けるために手を出した家康くんに、理事長はそう言い放った。
その言葉に家康くんはゆっくりと理事長の元へと歩み寄る。
1度振りほどかれた手で明智くんは再び家康くんを引き止めた。
みやびが叫んだ瞬間、明智くんを誘うとしていた戦闘型クローンの刀が明智くんを守ろうとした家康くんの背中に刺さった。
家康くんはそのまま倒れ込んだ。
それを明智くんと駆け寄った信長様が支える。
信長様は家康くんの手を握ってそう力強く言い切った。
そう言った家康くんは意識を失って、力なく頭を落とした。
わたしたちには成すすべがなくて、その家康くんの姿を静かに見届けることしか出来なかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。