「……それ、まさかエッチのこと言ってるわけ?」
「うんそうだよ。無理しちゃだめって言ってたでしょ?」
ユウがため息をついた。
「なんでそうなるわけ? あれは、僕が総合格闘技をやってるから、先生はその練習のことを、」
「傷口が開いたら大変だよ」
「話聞く気ないよね?」
「とにかく無理しちゃだめ……」
そして、私は一度深い息をすると、勇気を出して言った。
「だからね。……き、今日は、私が……してあげる」
ユウのために気持ちよくしてあげたいと思った。
その意思を伝えると、ユウはちょっと驚いていた。
「本気で言ってるの、それ」
「う、ぅん。私……やってみる……」
そして、彼に手を伸ばした。自分なりに頑張ってみた。
頬に触れてキスをしたり、ユウの身体に触れたりーー。つたないキスマークを付けてみたりもした。
そんな私をユウは無表情で受け止めていた。私はあまりうまくない。彼のように、相手を気持ちよくさせることができない。
気持ち……よく、ないよね……。
私は、ユウに気づかれないほど、ちいさく息を吐いた。
「あぁ、もう無理」
ユウは私を引き寄せると、強引にキスをした。突然のことに驚いて、私は目を見開く。
「っ……ユウ?」
「その顔とか、遠慮がちなキスとか……、不慣れな手つきとか堪んないんだよね。すっごい欲情してくる」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。