第119話

ご褒美⑤
3,953
2019/04/18 13:46


「……それ、まさかエッチのこと言ってるわけ?」
「うんそうだよ。無理しちゃだめって言ってたでしょ?」
 ユウがため息をついた。
「なんでそうなるわけ? あれは、僕が総合格闘技をやってるから、先生はその練習のことを、」
「傷口が開いたら大変だよ」
「話聞く気ないよね?」
「とにかく無理しちゃだめ……」
 そして、私は一度深い息をすると、勇気を出して言った。
「だからね。……き、今日は、私が……してあげる」

 ユウのために気持ちよくしてあげたいと思った。
 その意思を伝えると、ユウはちょっと驚いていた。
「本気で言ってるの、それ」
「う、ぅん。私……やってみる……」
 そして、彼に手を伸ばした。自分なりに頑張ってみた。
 頬に触れてキスをしたり、ユウの身体に触れたりーー。つたないキスマークを付けてみたりもした。
 そんな私をユウは無表情で受け止めていた。私はあまりうまくない。彼のように、相手を気持ちよくさせることができない。
 気持ち……よく、ないよね……。
 私は、ユウに気づかれないほど、ちいさく息を吐いた。
「あぁ、もう無理」
 ユウは私を引き寄せると、強引にキスをした。突然のことに驚いて、私は目を見開く。
「っ……ユウ?」
「その顔とか、遠慮がちなキスとか……、不慣れな手つきとか堪んないんだよね。すっごい欲情してくる」

プリ小説オーディオドラマ