「妊娠してるって……?」
「うん。だって生理来てないし」
「そうなの?」
「つわりもあるし」
「ぇ、ぇええ…………」
「あと……なんとなく熱っぽい」
「…………気をつけてたよ?」
「でも、避妊したことないよね?」
「そうだけどさ」
「…………」
「し、失敗したことないよ?」
困ったように笑うユウ。
そんな顔してもだめだよ。
頬を膨らませた。
「ユウ、こんだけ毎日愛し合ってたら、そんなこと言い切れないでしょ?」
「言い切れるよ。僕なりに気をつけてたし。タイミングもちゃんと合わせてたし」
「……ユウ。ひどい……ユウの子だって……認めてくれないの?」
「え、ちが」
「認めて……くれないの?」
「杏奈……ごめんっ、そういうつもりじゃなかったんだ。なんていうかちょっとびっくりして……あぁ、どうしよう。ちゃんと順番守りたかったのに……ごめんね。杏奈のこと大切にするから」
「ほんと?」
「もちろんだよ」
「ユウ……よかった。私、ユウの子なら産むよ」
「ありがとう」
あ、おなか痛い。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!