第171話

拘束①
4,706
2019/05/06 12:08


 ある夜、岡田さんから急に呼び出された。わけがわからないまま、タクシーで家に行った。
 ドアがあいた瞬間、腕を掴まれた。
「いらっしゃい」
 これまで見たことないくらいの笑顔だった。
「こっちおいでー」
 岡田さんは、満面の笑みを浮かべたまま、私の手を引いた。リビングへは行かずそのまま二階へ行った。
「岡田さん?」
 階段を登っている途中、声をかけたけれど返事はなかった。連れていかれた場所は寝室だった。私は意味がわからず、岡田さんを見た。
「あの……岡田さん?」
「んー、なにー?」
 彼はクローゼットを開けている。至って普通だ。けれど、この状況はやっぱりへんだ。そばで立ち尽くしたまま、彼を見つめる。
「よ、用ってなんですか? と、突然連絡があったから、なにかあったのかなって……」
「あぁ、あれかー。あれはねぇ、嘘だよ」
 突然、そんなことを言われた。頭が真っ白になる。
「はい?」
 ようやく、岡田さんが私のほうを向いた。その手には、紐が握りしめられていた。ひたいに滲んでいた汗が頬を伝っていった。


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