私は迷った。迷ったあげく答えた。
「…………好き……」
かすれた声で言ったのち、視線を持ち上げる。
ドキリとした。ユウの瞳が悲しみに満ちている。
「今、躊躇したよね」
「え」
「すぐに言わなかった」
「ち、ちがっ」
「ーーもういい」
ユウが背面を見せた。そして、歩き出す。すがるような声で引き止める。
「まってっ、お願いッ……いや、お水……ッ」
バタン。ドアの閉まる音。ユウは去っていった。
「……ッ」
静けさの中、私は悔いた。すぐに好きと言っていたら水が飲めた。口の中はカラカラに乾ききっていた。
ひどい口渇感に襲われながらも、心中は疑問で溢れていた。
どうして私なの? なぜ、ユウは私を選んだの? ごく普通の私をなぜ?
考えても答えはでないまま、身体だけが枯れていくようだった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。