第10話

監禁⑩
15,922
2019/03/28 09:30


 私は迷った。迷ったあげく答えた。
「…………好き……」
 かすれた声で言ったのち、視線を持ち上げる。
 ドキリとした。ユウの瞳が悲しみに満ちている。
「今、躊躇したよね」
「え」
「すぐに言わなかった」
「ち、ちがっ」
「ーーもういい」
 ユウが背面を見せた。そして、歩き出す。すがるような声で引き止める。
「まってっ、お願いッ……いや、お水……ッ」
 バタン。ドアの閉まる音。ユウは去っていった。
「……ッ」
 静けさの中、私は悔いた。すぐに好きと言っていたら水が飲めた。口の中はカラカラに乾ききっていた。
 ひどい口渇感に襲われながらも、心中は疑問で溢れていた。
 どうして私なの? なぜ、ユウは私を選んだの? ごく普通の私をなぜ?
 考えても答えはでないまま、身体だけが枯れていくようだった。

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