もしほんとうの私を知ってもあなたは私を愛してくれますか。
「おまえなど、いなければいいのに」
幼いころ、よく言われた言葉だ。
私は五歳のころ、父と母を事故で亡くした。親なしの私を引き取ったのは、叔父と叔母だった。もともと父と母をよく思っていなかった彼らは、私のことが嫌いだった。
「部屋から出てくるな」
「顔も見たくない。おまえなど、いなければいいのに」
毎日、言葉の暴力をうけた。ぶたれることもあった。アザができないように、叔父と叔母はそればかり気にしていた。
ある時、私が友だちをケガさせたせいで、学校に叔父と叔母が呼ばれた。彼らは、私のためになんども頭を下げた。その日、家に帰ってから動けなくなるまで、なぐられた。そして、最後に叔母が吐き捨てた。
「あんたが、あんな馬鹿なことしなければ、あんたの親が死ぬことはなかった。あんたが殺したのよ。わかってる?」
ーーこの、人殺し。
両親が死んだのは、私のせいだ。出かけた先で私は、はしゃいでいた。夢中になって走っていた。両親が慌てて追いかけた。彼らは、トラックに轢かれて死んだ。私が、周りをよく見ていれば両親が死ぬことはなかった。私は、人殺しだ。叔母の言うとおり、私は人殺しーー。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。