第146話

非日常④
2,744
2019/04/29 13:34


 クッと岡田さんの口もとが緩む。彼は、蹴り上げた足に力を込めた。そして、思いきり踏み込むと、美咲さんに膝蹴りをした。
 圧倒された。なんて素早い身のこなしだろう。素人の私でも、無駄な動きが一切ないと分かるほど、彼の動きは美しかった。
 けれど、美咲さんも負けていない。
「だ、か、ら、手加減すんなっつったろうがっ」
 膝蹴りをひたいで受け止めた美咲さんは、岡田さんの足を掴んだ。
「わっ」
 バランスを崩した岡田さん。その隙をつかれ、思いきり床に叩きつけられた。そこで、試合は終わった。頭を押さえながら、岡田さんはゆっくりと起き上がる。
「いったぁ……美咲さん。ひどいな。しかも、今、目を狙ったでしょう。おかげで受け身取れなかったじゃないですか」
「ひどいもクソもあるか。おまえだって、金的攻撃しようとしやがって」
「あ、バレました?」
「馬鹿野郎」
 なにやら楽しそうだ。さっきまでの張り詰めた空気はなくなっていた。
 あ、意外と仲良いんだ。
 ちょっと安心した。
「杏奈先輩、どうでした?」
 浩太くんから声をかけられた。
「あ、うん。すごく新鮮だったよ」


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