第88話

玩具④
7,322
2019/04/12 11:50


 ヒステリックに叫ぶ桜子。縛られた私は、受け身すらもできない。
「あんたなんかっ、消えてしまえばいいのよっ、どうしてあんたが、ユウに愛されるわけ!? 私のほうがずっといいのに!」
 私に叫び散らす。桜子になんども踏みつけられる。顔や脇腹、足。口の中が、鉄くさい。胃液がこみ上げる。
「あんたなんかだいっきらいっ!」
 増えていく傷あと。打撲、擦り傷、切り傷。
 あれ、私、死んじゃうかも。
「あんたなんか、あんたなんかっ……」
 桜子が膝を上げる。そして、勢いよく下ろした。
「死んで!」
 ボキッ!
 身体を伝って、変な音が響いた。そして、猛烈な痛みが脳を刺激した。私は、目を見開き、身体をヒクつかせた。
「ァ……」
 痛い痛い痛い。腕が痛い。縛られたままの腕が痛い。なのに、折れたところを、押さえることもできない。
 痛い……死んじゃう。このまま殺される。
「はぁ……ハァ……っ」
 息ができない。苦しい。
「あらら、骨折れちゃった? ごめんなさいね。杏奈さん。どこが折れたの? ここ?」
 グッと腕を掴まれた。瞬間、神経を引きちぎられるような激痛がはしった。
「ぁ…………ッぅ」
「あぁ、痛いところにちょうど触っちゃったのね。でも、ワザとじゃないの。許して」

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