ヒステリックに叫ぶ桜子。縛られた私は、受け身すらもできない。
「あんたなんかっ、消えてしまえばいいのよっ、どうしてあんたが、ユウに愛されるわけ!? 私のほうがずっといいのに!」
私に叫び散らす。桜子になんども踏みつけられる。顔や脇腹、足。口の中が、鉄くさい。胃液がこみ上げる。
「あんたなんかだいっきらいっ!」
増えていく傷あと。打撲、擦り傷、切り傷。
あれ、私、死んじゃうかも。
「あんたなんか、あんたなんかっ……」
桜子が膝を上げる。そして、勢いよく下ろした。
「死んで!」
ボキッ!
身体を伝って、変な音が響いた。そして、猛烈な痛みが脳を刺激した。私は、目を見開き、身体をヒクつかせた。
「ァ……」
痛い痛い痛い。腕が痛い。縛られたままの腕が痛い。なのに、折れたところを、押さえることもできない。
痛い……死んじゃう。このまま殺される。
「はぁ……ハァ……っ」
息ができない。苦しい。
「あらら、骨折れちゃった? ごめんなさいね。杏奈さん。どこが折れたの? ここ?」
グッと腕を掴まれた。瞬間、神経を引きちぎられるような激痛がはしった。
「ぁ…………ッぅ」
「あぁ、痛いところにちょうど触っちゃったのね。でも、ワザとじゃないの。許して」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。