ユウは今日の出来事を訊いてくる。それに対して私は、ひとつひとつ事細かに説明する。どんな小さなことでも報告する。
「そうなんだ。ありがとう」
報告したあと、彼はご褒美をくれる。繰り広げられる甘い愛の交歓。
「ぁ……ッ」
「ここ、触られるの杏奈好きだよね」
「んっ……」
「気持ちよさそう。可愛い」
ユウの甘い声に私の身体は熱くなって、止まらなくなる。なにもかもユウのものになった気がして満たされる。
監禁。その言葉は今は違う気がする。けれど、ユウはたびたびその言葉を使う。
「監禁してごめんね」
「いいよ」
「杏奈がいやだったらやめるよ」
「いいってば」
申し訳なさそうなユウに私は必死にすがりつく。
ユウはいつもどこか不安そうだった。ときおり強く私を求めることがある。私はそれを必死で受け止める。狂おしいほどの愛。
けれど、どんなに受け止めても、彼の目から不安の色が消えることはない。
なぜ、そんな目をするの? 私はそばにいるのに。安堵していいのに。離れるつもりなんてないのに。だから、監禁されてるつもりはない。
毎日ここに帰ってくるのもユウに繋がれるのも、私がそれを望んでいるからだ。
束縛されたい。ユウに縛られたい。私は、ユウを愛してしまった。
たとえ、それがストーカーだった人であっても関係ない。
私を愛してくれる。大切にしてくれる。それで、じゅうぶんだった。
なのになんで足りないの?
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。