静かな屋上。私は、岡田ユウに様々な攻撃を仕掛けた。けれど、彼はとてもすばしっこく、幾たびの攻撃をも避けた。かと言って、余裕ではあるまい。口からはおびただしい血が出ているし、腹部からにじむ血跡も痛々しい。
どうせ限界のくせに。
私は、笑って見せた。
「いつも落ち着き払っているあなたよ。けれど、今ではどうだろうか。フラフラだし、まるで子猫のよう」
「…………」
「あははは、足も震えているよ。我慢してるのかい? ださいね。出血もすごい。さすが、思いきり貫いただけある。それでも、勝てるつもりかい?」
「……関係ない」
「フハハハハ、ばっか!! 関係あるだろう」
「…………」
「桜子様に愛されて、私はそんなおまえが、羨ましくて仕方なかったよ。桜子様とエッチしているときも私は監視カメラの前で指を咥えてみていた。桜子様は美しい。なのに、なぜ、おまえは桜子様を愛さなかった」
「よくしゃべる使用人だな」
「はは、無視か。ーーなぁ、岡田ユウ。桜子様から犯されているとき、ほんとうは感じていたんだろう?」
「五月蝿い」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。