第48話

嫉妬⑧
8,123
2019/04/03 12:57


「さっきはどうも」
 つい先ほどまでいっしょに飲んでいた男の人だった。
「な、んで」
「静かに。大声出したら殺すぜ?」
 そう言って笑みを浮かべる手にはナイフ。身体がガタガタと震えだす。
 駅からのアパートへ向かう途中、抜け道がある。そこを通ると、時間短縮になる。けれど、両サイドは山。人通りがほとんどなく真っ暗。何かあったときは、助けを呼べない場所だった。
 私に限ってそんなことない。そんな根拠もないことを勝手に考えていた。我ながら、ばかだ。
「大人しくしてたら、殺さねぇから」
 男の人はそう言うと、私に顔を寄せた。知らない人とのキス。ギュっと目を閉じて、されるがままキスを受けた。
「口を閉じんなよ」
「ッ……」
「そう、それでいい」
 押さえつける力はとにかく強い。怖くてたまらなかった。
「やめて」
 その言葉すらも震えてかすれた。
「会ったときから思ってたけど、いい身体してるよな」
 服がゆっくりとあげられていく。背中に石があたって痛い。下着が丸見えになった。お気に入りの藍色のレースの下着。一昨日上下セットで買ったばかりのもの。
 必死に抵抗した。けれど、やっぱりどうにもならない。ただ泣くしかなかった。
「っ……やだ」


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