第202話

愛護⑧
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2019/05/12 13:04



 桜子様は、私にとても冷たかった。かつて何度も桜子様を、諦めさせようとした。
「桜子様、このまま岡田ユウを追い求めても……」
 けれど、私の話など聞き耳を持たなかった。
「私は、ユウじゃないと意味ないの」
「しかし、」
「うるさい! あんたなんかただの使用人なのよ? いつでもクビにできるんだから!」
 狂っていく桜子様。どうにか引き戻そうと頑張った。彼女のためにすべてを注いだ。けれど、彼女は見向きもしてくれなかった。
 私は桜子様を愛していたーー……。
 彼女を救おうとしていた。けれど、救えなかった。
 一番彼女のそばにいたのは、私。救えなかったーー。
 ……そう。なにもできなかったのは、私のほうだった。ずっとずっと桜子様から愛されるのを待っていた。けれど、その願いは私の独りよがりだった。桜子様にとって、私はただの使用人だったのだ。それ以上のことを望む私が間違っていた。
 ーー嗚呼、桜子様……私もそちらへ逝っても、イイデスカ?
 手の中にあるナイフ。それを首へあてがった。
 落ちて逝く意識の中で、桜子様の笑顔が鮮明に脳裏をよぎり、そして、消えていった。
 また、あの世でお逢いしませう。桜子様。……--。



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