「ん……」
目が覚めた。重たい瞼をなんとか持ち上げる。蛍光灯の明かりが視界に入った。けれど、ここがどこかわからない。
私は殺風景な部屋の中にいた。コンクリートむき出しの冷たい雰囲気が漂う小さな部屋だ。なぜかそこで眠っていたようだ。
「ここ、どこ……?」
起き上がろうとした。けれど、身体が動かない。
そこで気づく。私はベッドで横たわった状態で拘束されていた。手と足片方ずつ、計四ヶ所を拘束具でがっちりと固定されている。
ググッと拘束具を引っ張ってみた。紐状の拘束具は太く頑丈そうだ。
辛うじてわずかに身体の向きが変えられるが、起き上がるのは困難だった。
「なにこれ……」
恐怖が押し寄せてくる。現状を確認すべく視線を彷徨わせる。
窓はなく、外の様子がわからない。どうやら地下室のようだ。
真っ白な壁には電気のスイッチが一つだけ。あとは、木の机と段ボールが数個。日常用品がないわりに、ガラクタが多い。
と、地面にデジタル式の時計が転がっていた。日付は五月四日。時刻は午後八時二分。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。