第31話

溺愛②
12,024
2019/03/30 11:31


 普通なら捕まえたその日に無理やり抱くのではないだろうか。一日中、そばで私を愛でるのではないだろうか。
 それなのに、ユウは違う。胸に触れさえもしない。私が、それを願っていてもーー。
 ユウの艶めいた瞳。透きとおった声。凛とした姿。そのどれもが、私を魅了させる。
 あぁ、ユウ。あなたに触れられたい。もっと愛されたい。縛られたままでいい。それでもいいから、私を抱いて。お願いーー……。
 そんなふうにして悶々と過ごしていたある日のことだった。ユウが女の人を連れて帰ってきた。
「おじゃましますー」
 女の人の声を聞いて、一驚した。声の感じからして若そうだ。やけに甲高くて、妙に色っぽい。
 そう言えばユウが昨日言ってた。大手取引先の受付嬢から会いたいと言われている、と。
 私は悔しかった。取引先の受付嬢だからという理由で、ユウから優しくしてもらえる女の人が羨ましかった。
「無理言ってすみません。突然家に行きたいなんて言っちゃって」
「平気。むしろ来てくれて嬉しいよ」
「おかださんからそんな風に言ってもらえるなんて……幸せですっ」
 その言葉に、動きを止めた。
 ーーおかだ?
 ……ユウの苗字……おかだって言うんだ。私は知らないのに……。

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