普通なら捕まえたその日に無理やり抱くのではないだろうか。一日中、そばで私を愛でるのではないだろうか。
それなのに、ユウは違う。胸に触れさえもしない。私が、それを願っていてもーー。
ユウの艶めいた瞳。透きとおった声。凛とした姿。そのどれもが、私を魅了させる。
あぁ、ユウ。あなたに触れられたい。もっと愛されたい。縛られたままでいい。それでもいいから、私を抱いて。お願いーー……。
そんなふうにして悶々と過ごしていたある日のことだった。ユウが女の人を連れて帰ってきた。
「おじゃましますー」
女の人の声を聞いて、一驚した。声の感じからして若そうだ。やけに甲高くて、妙に色っぽい。
そう言えばユウが昨日言ってた。大手取引先の受付嬢から会いたいと言われている、と。
私は悔しかった。取引先の受付嬢だからという理由で、ユウから優しくしてもらえる女の人が羨ましかった。
「無理言ってすみません。突然家に行きたいなんて言っちゃって」
「平気。むしろ来てくれて嬉しいよ」
「おかださんからそんな風に言ってもらえるなんて……幸せですっ」
その言葉に、動きを止めた。
ーーおかだ?
……ユウの苗字……おかだって言うんだ。私は知らないのに……。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!