「なにってこっちがききたいよ。さっきから、声かけてるのに、全然反応ないし。しかも、ブツブツひとりごと言ってさ。寂しい、とか、僕はいない、とか。まるで僕が死んだみたいな言い方じゃない」
「だって、家帰っても、ユウがいないんだもん。寂しくて」
「いや、僕病人だからね? 好きで入院してるわけじゃないし。っていうか、結構重症だったんだよ? わかってる?」
「……そうだよね」
「そうだよねって」
ひどいなぁ、なんて笑うユウ。トクンと胸が鳴った。
そうだよ。喜んでいいんだよね。だって、ユウはこんなに回復した。あんなに重症だったのに、二ヶ月でこんな元気になったんだもん。喜ばないとだめだよね。先生もびっくりしていた。人の生命力ってすごい、というかユウがすごいのかな。
あの日の夜ーー。
もう絶対だめだと思った。だって、ユウの身体すごく冷たくて、それに血だらけだった。
あんな状態で、桜子の使用人と対峙したのだ。屋上で意識を無くしたユウを見たとき、てっきり死んだのかと思った。だけど、辛うじて命をとりとめた。みんなすごく泣いてた。
あ、もちろん嬉し泣きのほうね。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。