第208話

涙と悩と幸③
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2019/05/13 12:03


「なにってこっちがききたいよ。さっきから、声かけてるのに、全然反応ないし。しかも、ブツブツひとりごと言ってさ。寂しい、とか、僕はいない、とか。まるで僕が死んだみたいな言い方じゃない」
「だって、家帰っても、ユウがいないんだもん。寂しくて」
「いや、僕病人だからね? 好きで入院してるわけじゃないし。っていうか、結構重症だったんだよ? わかってる?」
「……そうだよね」
「そうだよねって」
 ひどいなぁ、なんて笑うユウ。トクンと胸が鳴った。
 そうだよ。喜んでいいんだよね。だって、ユウはこんなに回復した。あんなに重症だったのに、二ヶ月でこんな元気になったんだもん。喜ばないとだめだよね。先生もびっくりしていた。人の生命力ってすごい、というかユウがすごいのかな。
 あの日の夜ーー。
 もう絶対だめだと思った。だって、ユウの身体すごく冷たくて、それに血だらけだった。
 あんな状態で、桜子の使用人と対峙したのだ。屋上で意識を無くしたユウを見たとき、てっきり死んだのかと思った。だけど、辛うじて命をとりとめた。みんなすごく泣いてた。
 あ、もちろん嬉し泣きのほうね。


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