第140話

宿命⑤
2,916
2019/04/29 04:41


「気持ち良さそうな顔。もっと声出して」
 ユウが触れる。電流が走ったような感覚に身体を反らせた。
「あ……ッ」
 神経を掴まれたような感覚に呻く。快楽に引きづりこまれ、かろうじて保っていた理性が飛んでいく。
 すごく……気持ちいい。
 ユウの愛に包み込まれて酔いしれた。愛で満たされたエッチ。心も身体も奪われて、私はこれ以上ない満足感を得た。
 これからは心置きなく結婚の話ができる。子どもの話だって、ユウのほうからしてくれた。歩んでいく未来は光でいっぱい。
 あぁ、私、こんなにしあわせでいいのかなーー。

 いっぱい愛し合ったあと、夜のうちにホテルを出た。
「僕の家に泊まればいいのに」
 ユウはそう言ってくれたけど断った。
「そうしたいけど、明日持っていかないといけない書類がアパートにあるんだもん」
「そっか。じゃあタクシー呼んであげる」
「えぇ、アパートすぐそこだよ」
「でも」
「それに……ひとりで歩きたい気分なの。今すごく気持ちが高揚してるから……」
 ユウは心配そうな顔をしながら私を送りだした。
 心配性なんだから。でもそんなところも好き。
 困ったような笑顔に、私は手を振った。ぷかぷかと浮いた気持ちのまま、夜の住宅街を歩いて帰った。
 ユウからプロポーズされた。そして、婚約指輪までーー
 明日……だれに報告しよう。

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