第38話

溺愛⑨
11,196
2019/04/01 08:56


 ユウのキスは、苦おしいほど優しい。さっきまで女の人を抱いていたユウ。許せなかった。
 でも、こんな優しいキスをされたら……許してしまう。ユウはずるい。
 キスをしながら腰に手を回し、私を引き寄せるユウ。
「ン……っ」
 息継ぎさえも与えてもらえない。息が乱れていく。
「ユウ、息が……できな、」
「まだ、だめ」
 腰に手を回す力がさらに強くなる。密着した状態で濃厚なキス。甘く長い口づけ。ユウの柔らかい唇。頬に触れるユウの細い髪。
 ……我慢……できない。
 私はユウの首に手を回すと、自分から求めた。ユウとのキスに夢中になった。私のキスを優しく受け止めてくれるユウ。それが嬉しくてたまらなかった。
 ユウがゆっくりと顔をあげた。
「杏奈……すごく積極的」
「ッ……」
「いやじゃないの?」
「……うん」
「どうして?」
「そ、それは」
「もしかして……嫉妬?」
「ッ……そ、んなじゃ」
 私は恥ずかしくて口を噤んだ。

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