ユウのキスは、苦おしいほど優しい。さっきまで女の人を抱いていたユウ。許せなかった。
でも、こんな優しいキスをされたら……許してしまう。ユウはずるい。
キスをしながら腰に手を回し、私を引き寄せるユウ。
「ン……っ」
息継ぎさえも与えてもらえない。息が乱れていく。
「ユウ、息が……できな、」
「まだ、だめ」
腰に手を回す力がさらに強くなる。密着した状態で濃厚なキス。甘く長い口づけ。ユウの柔らかい唇。頬に触れるユウの細い髪。
……我慢……できない。
私はユウの首に手を回すと、自分から求めた。ユウとのキスに夢中になった。私のキスを優しく受け止めてくれるユウ。それが嬉しくてたまらなかった。
ユウがゆっくりと顔をあげた。
「杏奈……すごく積極的」
「ッ……」
「いやじゃないの?」
「……うん」
「どうして?」
「そ、それは」
「もしかして……嫉妬?」
「ッ……そ、んなじゃ」
私は恥ずかしくて口を噤んだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。