第14話

口渇④
15,104
2019/03/28 13:47


 一時間くらい経っただろうか。私は、身体をよじるようにして唸った。
「トイレ……っ」
 今度はトイレに行きたくなってきた。ユウは部屋を出て行ったっきり戻ってこない。
 腕は拘束具でガッチリと固定されたままだ。お腹を押さえることもできず、私は押し寄せる感覚に身体を震わせた。
 こんなことなら、あんなにたくさん飲まなきゃよかった……。
 監禁されて、トイレに行きたくなったのは初めてだ。
 ……ゆう……早く部屋へ来て!
 ガチャ……ン。
 ドアの開く音がした。
「杏奈」
 ユウが入ってきた。
 言わなきゃっ!! ユウの機嫌を損なわないようにさえすればっ……!
 私は可能なかぎり顔を上げて言った。
「ユウ……っ、トイレ」
「なに?」
「トイレ……行きたいです」
「トイレ?」
「はい」
 この機会の逃すわけにはいかない。私は必死な顔で、ユウを見つめた。
「トイレかぁ……うーん。そうだよね。ここへ来て一度も行ってないもんね。どうしようかなぁ」
 ユウは、しばらく考えていた。ただトイレに連れていけばいいだけなのに、そんな悩むことなどあるのだろうか。

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