「ぇ……っ」
理解できないままの岡田ユウ。音もなく裂いていく。ググッと力を込めて。皮膚を、肉を、横隔膜を、断ちませう。
「……ァ……ッ」
戸惑いの声は、岡田ユウのもの。顔を上げ、私は彼に微笑みかける。それはもう、満面の笑みで。
「研ぎたてのナイフのお味はいかが?」
「……っ、ぉ、まえ……は、……さ、くらこ、の……ッ」
「そのとおり。私は桜子様に、お仕えする身。もう彼女は死んでしまったけれどもね」
岡田ユウの表情が無から苦へ歪んでいく。そして、彼の口から飛び出した鮮血。お逝きなさい。
「……っ、ゴ……ボ……、ァ……」
溢れる溢れるそれはそれはたくさんの血。みぞおちに突き刺した、私のサバイバルナイフ。グクっとさらにさらに突き上げると、岡田ユウの身体はビクビクと痙攣した。
「っ、ァ、……グ……、」
突き立てられたナイフを、力なく見つめる視線。
あぁ、その顔……その目……なんて……美々しいのだ。見事なまでのその苦悩な表情……ーー。
……すごい……ァァ、堪らないよ、岡田ユウ!!
私は、握りしめるナイフを、さらに突き上げた。
「……ァ、…………っ」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。