第188話

忠誠③
2,452
2019/05/10 11:53



「ぇ……っ」
 理解できないままの岡田ユウ。音もなく裂いていく。ググッと力を込めて。皮膚を、肉を、横隔膜を、断ちませう。
「……ァ……ッ」
 戸惑いの声は、岡田ユウのもの。顔を上げ、私は彼に微笑みかける。それはもう、満面の笑みで。
「研ぎたてのナイフのお味はいかが?」
「……っ、ぉ、まえ……は、……さ、くらこ、の……ッ」
「そのとおり。私は桜子様に、お仕えする身。もう彼女は死んでしまったけれどもね」
 岡田ユウの表情が無から苦へ歪んでいく。そして、彼の口から飛び出した鮮血。お逝きなさい。
「……っ、ゴ……ボ……、ァ……」
 溢れる溢れるそれはそれはたくさんの血。みぞおちに突き刺した、私のサバイバルナイフ。グクっとさらにさらに突き上げると、岡田ユウの身体はビクビクと痙攣した。
「っ、ァ、……グ……、」
 突き立てられたナイフを、力なく見つめる視線。
 あぁ、その顔……その目……なんて……美々しいのだ。見事なまでのその苦悩な表情……ーー。
 ……すごい……ァァ、堪らないよ、岡田ユウ!!
 私は、握りしめるナイフを、さらに突き上げた。
「……ァ、…………っ」


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