岡田さんが、私を愛おしそうに見つめる。
昨日までは、ただの知り合いだったのに、ただ笑って話すだけの関係だったのに、そんな人と甘い行為をしている。
彼は私が気持ちいいと思うところに、ぜんぶ触れた。まるで、私のすべてを知っているかのように。
私たちは、何度も何度も繋がりつづけた。岡田さんの息も次第に上がっていく。彼の吐息は甘くて、いやらしかった。私は夢中で彼の名を呼んだ。
「岡田さん……気持ちいい」
「僕も」
身体が溶かされていく。そして、私の心と身体をやさしく繋ぎとめた。
「……岡田さん」
「ユウって呼んで」
「ッ……」
「お願い」
「……、ユウ……っ」
「もっと」
「ユウ……ッ、ユウ…………、好き……」
ふいに出た。好きーー。
そこで気づいた。
あ……私、この人のこと……好きなんだーー。
すると、岡田さんが、私に微笑んだ。優しい優しい笑み。
「……僕も……大好きだよ。ーー杏奈」
そして、彼は……ユウは果てた。
こんなに懐かしい気持ちになるもの、こんなに愛しいと感じたりするのも、岡田ユウ、あなたひとりだけ。
思い出せなくてもいい。私はあなたが好きだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。