第211話

祝杯①
2,439
2019/05/14 01:34


 面会に行くやいなや、ユウさんからペンを渡された。
「え、なんすか急に?」
「ここにサインして。印鑑は今度でいいから」
「え、サインすか?」
「そう、これに」
 ほう。婚姻届けか。……ほう……。…………へ?
「婚姻届け!?」
「うん。僕たち結婚するから。ね、杏奈」
「ご、ごめんね。証人になってくれるかな……」
 うぉぉ……杏奈先輩、照れてる。照れてる先輩も、いいな。……とそんなこと言ってる場合じゃねぇ。
「お、俺なんかでいいんすか? って、美咲さんもう書いてる……」
 そう言ってる間に書き終えた美咲さん。鞄から印鑑を取り出すと、アッサリと押印した。
 美咲さん、順応はえぇ!普通、動揺しないか!?
 唖然としていると、美咲さんから喝を入れられた。
「なにをぼうっとしている。浩太も早く書け」
 そうは言われても。
「浩太、ちゃっちゃと書いてよ」
 ユウさん、適当だな。
「浩太くん……お願い……します」
 杏奈先輩まで。おおぉ……みんなから懇願されてる……。
 ってことで。書きましたよ、はい。まぁ、そりゃあんだけ頼まれたら、断れねぇし。それに……ユウさんと杏奈先輩の証人になれたこと、……内心嬉しかったしな。


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