面会に行くやいなや、ユウさんからペンを渡された。
「え、なんすか急に?」
「ここにサインして。印鑑は今度でいいから」
「え、サインすか?」
「そう、これに」
ほう。婚姻届けか。……ほう……。…………へ?
「婚姻届け!?」
「うん。僕たち結婚するから。ね、杏奈」
「ご、ごめんね。証人になってくれるかな……」
うぉぉ……杏奈先輩、照れてる。照れてる先輩も、いいな。……とそんなこと言ってる場合じゃねぇ。
「お、俺なんかでいいんすか? って、美咲さんもう書いてる……」
そう言ってる間に書き終えた美咲さん。鞄から印鑑を取り出すと、アッサリと押印した。
美咲さん、順応はえぇ!普通、動揺しないか!?
唖然としていると、美咲さんから喝を入れられた。
「なにをぼうっとしている。浩太も早く書け」
そうは言われても。
「浩太、ちゃっちゃと書いてよ」
ユウさん、適当だな。
「浩太くん……お願い……します」
杏奈先輩まで。おおぉ……みんなから懇願されてる……。
ってことで。書きましたよ、はい。まぁ、そりゃあんだけ頼まれたら、断れねぇし。それに……ユウさんと杏奈先輩の証人になれたこと、……内心嬉しかったしな。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。