男の子が差し出すものを見た。見慣れた赤いハンカチ。ハッとして男の子から受け取った。
「あっ、私落としちゃったんだ」
恥ずかしくなってそこから逃げ出すようにかけた。学校でその男の子の姿を探した。けれど、違う学校だったらしく見当たらなかった。
あとから、後悔したんだよね。名前訊いておくんだったって。あの子の名前。知りたかったな……。もう過去の話だけどさ。あぁ、そうだ。今日はユウに報告があるんだった。
「ねぇ、ユウ」
「なぁに?」
お腹の中に、赤ちゃんがいるってこと。ユウ、知ったら驚くかな。
「あのねーー」
ユウ、あなたと出会えてよかった。
あの日監禁されてよかった。
今でも、そう思うの。
可愛い可愛い私のユウ。
あなたは私の檻の中。
【完】
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。