迷うことなくそう答えた。私だってやりたいようにやる。それから、お酒を三杯のんだ。男の人から声をかけられる前に、すでに二杯のんでいたので、ずいぶんと酔ってしまった。
私は駅まで送ってもらうと、そこで別れた。
「家まで送るよ」
「平気」
同じ会話を何度もした。男の人は下心があったのだと思う。
男の人から逃げるようにして別れたあと、トボトボと家路を目指した。身体がやけに重く感じるのは、お酒のせいだけじゃない。
ユウの頬をひっぱたいてしまった。今さら、そんなことが気になった。謝っても許してくれないだろうか。いや、そもそも悪いのはユウのほうだ。
ユウがちゃんと私に連絡をくれていたら、そんなことしなかった。悪いのはユウ。
謝る必要なんてない。それでも気になってしまう。どんなことをされても、やっぱり私はユウが好きらしい。
私は、立ち止まり携帯のメールを確認した。未確認のメールはなし。
「連絡なし、か」
憂鬱な気持ちに身を寄せた。その時だった。うしろから腕が伸びてきた。
一瞬なにが起きたのがわからなかった。口を手で塞がれ、そばの茂みに引きずり込まれた。
パキパキと枝が折れる音と自分の身体が引きずられる音が耳に届く。声を出そうとした。けれど、口を塞がれてなにも言えない。
「ンンッ……っ」
男が馬乗りになった。そこでようやく相手の顔が見えた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!